私の野菜作りの心象風景はどこにあるのか

朝露をためる里芋の芽


私がガーデニングを始めたのは、2014年にカナダに引っ越してからです。日本の実家が花屋なので、花卉産業には携わっておりましたが、植物を育てるということはあまりしてきていませんでした。

そもそも、カナダに引っ越す前は香港のど真ん中に住んでいたので、のんびりガーデニングという雰囲気でもなかったのです。

にもかかわらず、今ではどっぷりガーデニングにハマっている私ですが、ときどき自分の中のガーデニング(野菜作り、庭造り)の原点はどこにあるのだろう、私はどんな庭園を目指しているのかしら、と考えることがあります。

ずっと自分の内側にある、理想のガーデンとでも言えばいいのでしょうか。そんな庭園の心象風景を探してみることにしました。


名前も知らないミャンマー人の庭

私たちは2015年から2018年にかけて、ミャンマーを三度旅行しました。ちょうど、情勢が落ち着いたタイミングだったのです。

たいていは田舎の街に宿泊し、村々を散策したり、寺院を見学するのがメインでした。そんな田舎のある村で、あるミャンマー人に声をかけられ、彼のお宅でお茶をごちそうになることになったのです。

ミャンマーといっても、田舎ですから決して市民の生活は裕福ではありません。でも、私たちに声をかけてくれた男性だけでなく、他の村人も含めてほとんどの方が笑顔で挨拶してくれました。

ミャンマーのある村のショップに集まる人々と子どもたち:2017年12月撮影


幸せの尺度は人それぞれですが、どうしてこの国の人たちはそれほど裕福ではないのにこんなににこやかでリラックスしているのだろう、と思ったものです。

でも、その男性の、緑に覆われた敷地と菜園を見て、なんとなく答えが見つかったような気がしました。

なんでもすくすくと育てることができるこの温暖な土地で、おいしくて新鮮な食べ物を家族といっしょに平和に(このときは比較的平和だった)楽しめているからだ、と。

「日本とイギリス出身です」というと、「日本は素敵な国なんだろうね。僕も行ってみたいとは思うけど…」と笑っていましたが、彼がその家と家族を誇りに思っていることが十分感じられました。私は、「日本は果たしてミャンマーよりも素晴らしい国といえるだろうか」と、心の中でつぶやかずにはいられませんでした。


アフリカの友人J

夫の古い友人Jが、農園を始めたのは3年ほど前だったと思います。彼と夫は仕事でつながりがあったので、最初は「サイドビジネス?」と思ったものですが、年々その規模を拡大させているようで、現在は完全に農園が本業になってしまっている感じ。

一度、百以上ものニワトリを盗まれるという不運もありましたが、今は養鶏だけでなく、養豚も大々的にやっている様子です。もちろん、野菜も育てていて、ときどき写真を送ってくれます。

そんな彼のガーデンはとても実用的です。使えるものは何でもリサイクルしてガーデニングに利用するというアプローチも、私が見習おうとしているところ。


友人ギリシャ人Jとフィリピン人Pのカップル

モントリオール近郊の街に住む友人夫婦に、去年初めて自宅へ招待されました。そこは限られた範囲の庭を最大限活用して野菜作りをしているお手本のような庭です。

ありとあらゆる作物、特にギリシャやフィリピン料理には欠かせない作物が、所せましと育てられています。今年私たちが葉アマランサスを育ててみようという気になったのも、この夫婦の影響でした。

日本では沖縄でよく作られている苦瓜も栽培されていて、「カナダ、ケベックで苦瓜が作れるとは!」と感心したものです。ちなみに、苦瓜は実だけでなく葉も食用にできると教えてくれたのも彼ら。実際に料理してみると、「この味は、ミャンマーで食べた料理で、何の野菜だか分らなかった葉っぱだ!」と、一つ謎を解くこともできました。


心象風景に恥じない野菜作り

・・・というと、ちょっとおおげさですが、野菜作りで悩んだら、いつも彼らとその菜園が頭に浮かびます。

ージャガイモに芽が出ちゃったけど、畑に植えて大丈夫かな? 病気とかもってないかな?

ーニンニクの芽が出ちゃったけど、植えたら育つのかな? 時間の無駄にならないかな?

ー森で集めた腐葉土を畑に入れるのはどうだろう? 畑が虫だらけになっちゃったらどうしよう?

そんなとき、もし彼らに相談したなら、きっと口をそろえてこう言うでしょう。

「Why not!?(なんでダメなの?)」


そうやって、心の声に後押しされながら、今日も土いじりを行うのでした。



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